目次
開催案内
開催報告
第30回MACSコロキウム前半では、京都大学大学院理学研究科付属サイエンス連携探索センター(SACRA)所属、石川勲特定准教授より「関数空間で読み解く力学系のデータ駆動解析」と題した講演が行われました。
石川氏は、整数論、機械学習・データ解析、関数空間論・力学系を用いたデータ解析など、幅広い分野の研究に携わってきた経歴を持たれた方で、今回の講演では主に、関数空間論による力学系のデータ駆動解析についての研究が紹介されました。他にも石川氏は現在、ニューラルネットワークの理論解析、数論(p進保型形式とp進L関数)、p進単語埋め込み、また、趣味であるクライミングにおける身体操作の強化学習などにも取り組まれており、豊かなアイデアと研究が紹介されました。
講演の本題となる問題は、データが生成されているときに、その背後にある力学系の構造をどう取り出すかという問題でした。その構造をどう特徴付けるかに様々な考え方がありますが、今回はその一つとして、関数空間上に定義された線形作用素を用意し、その不変部分空間や固有関数、スペクトルなどを調べることで特徴付ける方法が紹介されました。そして代表的なKOOPMAN作用素、PERRON-FROBENIUS作用素などについての詳細な説明がなされました。その上で、実際のデータから構造を取り出すためには、限られたデータから具体的にこれらの作用素を計算する必要があり、そのための方法としてEDMDやJetEDMDと呼ばれる手法が説明されました。
さらに応用先として、データが与えられたときに、そのデータの平衡点検知・ベクトル場の復元、背後にある微分方程式の復元などを行った具体例も紹介されました。
質疑応答と講演後の議論の時間では、数学分野の方のみならず、物理、機械学習分野の方なども交え、分野を超えて活発に意見が交わされました。



日時
2025年11月28日(金)14:45〜18:00
開催場所
理学研究科セミナーハウス(対面のみ)
⇒アクセス 建物配置図(北部構内)【10】の建物
プログラム
ティータイムディスカッション
講演1
『関数空間で読み解く力学系のデータ駆動解析』
石川 勲
京都大学大学院理学研究科 附属サイエンス連携探索センター 特定准教授
本講演では、非線形力学系を「関数空間に持ち上げて線形にみる」視点から、力学系から生成されるデータを元に元の力学系の振る舞いを捉える研究を紹介する。関数空間という大きな箱の中に様々な数学的な仕組みを構築することで、力学系の情報を効果的に抽出できるが、一方で、ノイズへの頑健性や計算負荷といったものへの課題も現れる。数学と工学をまたぐ研究領域として、理論と応用の狭間にある面白さを紹介したい。
講演2
『植物科学とデータ科学の融合』
黒谷 賢一
京都大学大学院理学研究科 附属サイエンス連携探索センター 准教授
植物はそれを取り巻く環境や自身の状態をセンシングし、生育や、生殖を巧妙に調節している。植物が何を感じ、どのように生きているかは全身や部位、組織でどのような遺伝子が発現しているかを網羅的に解析することで理解できると考えられる。今日、コンピュータとデータの科学の進歩は目覚ましく、これら大規模なデータを紐解くツールとして生物学になくてはならないものになってきた。今回は植物のゲノム、遺伝子、生育予測の試みについて議論したい。
継続討論会
コロキウム講演者との自由な情報交換会
備考